「このコーヒーは、他で飲むコーヒーとは別の飲み物ですね」
これ以上に嬉しい賞賛の言葉はない。
昨日の昼に来店いただいた男性のお客様、見覚えがある。
確か、昨年末の商店街イベントのときに映画上映に参加された方だ。
これから池上本門寺で仏教についての勉強会があるらしい。
その前に時間があったので、コーヒーを飲みに来てくれたそうだ。
仕上げなければならない資料があったが、せっかく来ていただいたお客様を放っておくわけにもいかない。
それがマージナル珈琲の原点だから。
話を聞いていると、普段から時間調整のためにコーヒーを飲むことが多いらしい。
新米大統領に似た名前のハンバーガーショップの話になり、
「一時期ましになったと思ったのに、最近またひどくなったね。仕方ないから頼んでいるけど、ひと口くらいしか飲まずに捨ててしまうんだよ。あれは、何かコーヒーとは違うものが入っているんじゃないの?」
「……」
まあ、何か入っていることは無いとは思うのだけど、マージナル珈琲と違うと思われる点を簡単に解説した。
「コーヒーの味を決めるのは、一番はやっぱり素材です。同じ生産国のコーヒー豆でも、生産者によって栽培方法や精製方法が異なりますから、丁寧な仕事をしたクオリティの高い(各国で品質ランクが定められている)豆の方が良いことは間違いないです。ちなみに僕が仕入れているのは最高ランクのものだけです」
「へー、そうなんだね」
「次に味に影響があるのは、焙煎してからどれくらい日数が経過した豆を使っているかです。コーヒー豆は焙煎した時から急激に酸化して、風味を損なっていきますから、焼いてから時間が経った豆を使うと、変な酸っぱさや雑味が出てしまうんです。ここでは焙煎後は密封して冷蔵庫で保存して、10日以上経過したものは使わないようにしています」
「そういえば、このコーヒーは飲んだ後すっきりしているよね」
「そうですね。その味を目指して作っています。ブラジル産とグアテマラ産のブレンドです」
その後、コーヒー談義に花が咲き、気がついたら1時間近くが経過していた。
僕も嫌いな方ではないので。
途中で、「もう一杯ください」とのリクエストをいただき、
「では、今度は別の豆を試してみてください」
と、インドネシア産の限定豆「フローレス花花」を出したのだが、今度は生産国の話になり、
「インドネシア以外はあまり知られてないですが、アジアの国々でも結構コーヒー豆が生産されているんです。例えばインド、タイ、ベトナム……、あと中国産のコーヒーもあるんですよ」
「あっそうなの!」
「日本では小笠原諸島と沖縄で栽培されているそうなんですが、僕は飲んだことないんですよね」
「え〜日本でも作れるんだ。知らなかったなぁ」
話は尽きない……。
そろそろ池上本門寺に行く時間ということで、帰られたのだが、1時間半くらいコーヒーの話で盛り上がってしまった。
コーヒー代600円也。
考えてみたら、とても非効率な商売であるが、来ていただいたお客様に幸せな気分になってもらうのが、マージナル珈琲の目指すところだから、これでいいのだろう。
あとで、ふと想ったのだが、あのオジさんは実はコーヒー店の評価をしている覆面審査員で、味や店の応対などを採点していったのではないか。
知らないふりをして、僕がどれだけコーヒーのことをわかっているかを試していたのではないか。
「まさか……」
「そんなことは……」
「ないか」
「お時間あるときに、ぜひまた来てくださいね」
(了)
マージナル珈琲のネットショップ開設しました。
コーヒーのブログ、コーヒーといろんな活動
自分で焙煎するコーヒーは格別である! 空き家を救う!空家レンジャー 理想工場をつくる! などなど
0コメント